本屋のバイト体験談
叔父は古本屋をしていました / 63歳 男性
叔父は古本屋をしていました。
今ではあまり見かけなくなりましたが、昔は今のように娯楽が多くありませんでしたので、読書好きの若者も多く、経営は充分に成り立っていました。
自身の土地に建てた店舗ですので、赤字になることはありません。安く仕入れた古本を高く売るのですから、赤字になる道理がありません。細々とでしたが、30年以上続けていました。
現在は後を継ぐものがいなかったので、店を畳んでいます。
叔父。他にも事業をしておりましたので、普段は叔父の妻と息子が交代で店番をしていました。
ところが、どうやら家庭内で騒動があったらしく、妻が実家へ帰ってしまいました。
息子だけでは店番は無理だということで、ちょうどバイトを探していた私に声がかかりました。
今のようにきちんとした雇用契約などはありませんでしたが、それでも身内のバイトにしてはきちんとした待遇でした。
時給も悪くありませんでした。
店番といっても、店の裏には勝手知ったるキッチンがありましたので、適当にジュースを飲んだりお菓子を食べたり、遊んでいるようなものでした。
叔父の息子というのは私の従兄弟にあたるわけですが、年も近かったので子供の頃から仲が良く、気遣うことは何もありませんでした。
叔母はほどなくして戻ってきたのですが、私はそのままバイトを続けさせてもらいました。
1年くらい続けていたと思います。暇な時は店の本を読んだりしていましたので、退屈することもありませんでした。
現在は大手チェーンが台頭してきましたので、昔ながらの古本屋はすっかり姿を消してしまいました。
大手チェーンの古本は、古本なのにビニールのカバーで覆ってあったり、綺麗にプレスされています。シミや破れのある本は、そもそも店頭に並びません。それが少し寂しく感じるのは、私が古い人間だからかもしれません。